一方その頃… リュウはまだ、地下道を這いつくばっていた
リュウ:「…くっ……体が動かん ……追跡は、できないか」
リュウ:悔しそうに言った後、先ほどの男との会話を思い浮かべる。初めて会ったはずだが、なぜだか、そんな気がしなかった…
のぶ:「にゃ〜」
リュウ:そんな、考えをめぐらせながら、鳴き声の主に目をやる「……ネコ?」
のぶ:「にゃ〜」 リュウのお腹の上に座る
リュウ:「…………面白い奴だな、なんだ? 餌はないぞ?」
のぶ:「ああ、別に餌はいらん、君と話がしたくてね」
リュウ:「……っ! 何者だ?」
のぶ:「猫の、のぶさんだ」
リュウ:払いのけようとするが、まだ体の自由が戻らない
リュウ:「……ふざけているのか?」
のぶ:「ふざけてはいないさ」
リュウ:「ならば、何が目的だ」 冷たい、機械的な声で質問する
のぶ:「ふむ、真実を知りたくないかね?」
リュウ:「真実だと? ……一体、なにが真実だと言うんだ?」
のぶ:「UGN、クローン、感情制御…そして人のあるべき姿。これらの真実を知りたくはないかね?」
リュウ:「……また、その話か…」 半ば、うんざりとしたような口調で答える
リュウ:「これまで、俺の中ではUGNの正義が唯一の真実だったんだ。その正義のためにならどんな事でもできた。……それをいまさら……変えられるわけが無い」
のぶ:「UGNか…君たちはしょせん操り人形にすぎないというのに…」
リュウ:「お前に、それを言われる筋合いは無い! 例え、どのような事があったとしても、俺たちは生き残るために精一杯のことをしてきたんだ!!」
のぶ:「…そうか、しかしこのまま行けば世界は滅びるのだがね」
リュウ:「…………世界が、滅びる?」 何を馬鹿なことを、と、そんな語調で
のぶ:「崩壊という現象を聞いたことはあるかね?」
リュウ:「……ああ、感情を抑えきれなくなった一般人がかかるという症状だろう」
リュウ:「我々のように、感情を抑え、アージを抑える術を知っていればそのようなことにはならぬのにな」
のぶ:「あの現象はな、君たちがいう正常な市民に起きているのだよ」
のぶ:「正確には…クローンに起こる現象だ」
リュウ:「はは……何を馬鹿なことを。UGNが俺たちに嘘を言っていたと? ありえない」
のぶ:「なぜありえないと言い切れる?」
リュウ:「我々はUGNのエージェントだ。それ以上の理由がどこにある」
リュウ:ピクリ、と指先が動く。徐々に、力が戻ってきている
のぶ:「ふむ…君はA0001を知っているかね?そしてその正体を」
リュウ:「A0001? 話に聞いたことはあるな。直接目にかかった事はないが。」
のぶ:「彼女は、制御装置をつけていない…」
リュウ:「制御装置をつけていないだと? バカな、彼女こそ最古のクローンにして完全なる存在のはずだろう!!」
のぶ:「ふう、制御装置の存在意義は彼女が、君たちを管理しやすくするためだよ」
リュウ:ズキンッ……また、右肩の銃創が疼く 「…まさか……それは、本当なのか?」
のぶ:「本当だ、彼女と長い月日を見てきた私がいうのだからな…私も彼女と同じ古代種と呼ばれる存在だ」
リュウ:「……なるほどな。それで? お前は俺に何を望んでいる」
のぶ:「世界の救済を、この世界が滅びに向かうのを止めて欲しい」
リュウ:「世界の救済? ずいぶんと大きく出たものだな。だが……話だけは聞こう。返事をするのはそれからだ」
のぶ:「ふむ、しかし話は、彼らと一緒にするとしよう、もうじき目的地につくのでね」
リュウ:「……一体、なんのことだ?」
のぶ:「つけばわかる…そこで人のあるべき姿を見ることができるだろう」
5−2.子供って、時々残酷よね
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